アニメの感想。

日々ただ消費するアニメの個人的感想帖です。

『異世界薬局』

全12話視聴完了。
なろう系。社畜異世界チート転生。
ストーリーは、現代日本で薬学研究者だった、薬谷完治。職場で倒れ、目を覚ますと、中世ヨーロッパ風の魔法のある異世界。そこの宮廷薬師ド・メディシス家の息子ファルマとして転生していた。雷に打たれたことによって、亡くなったはずのファルマに代わり、薬谷は医療行為が未発達なこの国で、現代薬学の知識と、物質創造、消去のチート能力と、貴族のみが使える神術を駆使し、疾病に立ち向かう。そして多くの人を救うべく「異世界薬局」を開業する。
全体的に馴染みない物質や薬の名前が多用されるにも関わらず、とてもわわりやすかった。そして、大人がきちんと誠実な大人で安心して見らせた。きちんとしている。主人公が超人的な神にも匹敵する力を持った子供の姿であり、主人公自身も己が何者かわからず、ただ人を救うという目的のために行動するのだが、それをそれぞれが自分の領分で支え、やるべきことをやっているという、当たり前かもしれないが、その当たり前がとても良かった。特にお父さん。
第3話で、陛下に薬を与えた帰りの馬車の中で、主人公が嘗ての自分の息子でないと感づいていたにも関わらず、それを受け入れる度量の広さ。更に、それに対して謙虚であり初心を忘れず、共に歩もうとする主人公。気不味そうな馬車の二人が、ここで再び親子になるシーンは、この物語のキャラクターの全てが濃縮されたかのようで印象的だった。
物語りのクライマックスは、帝国に黒死病が持ち込まれ、それが広がるのを防ごうとする主人公たち。そしてその黒幕である悪霊と化した元薬師であるカミュとの戦い。黒死病というリアルな病から、悪霊と言うファンタスティックな存在のバランスが上手いなと思った。ファンタジーに深みを持たせるのはリアルな知識。全てが架空の物だけでは出せない面白さがある。魔法でその世界にない、現代にある薬を構造を知ることで生み出すという、ただ治すだけで終わらない。にも、関わらず、最終的に悪霊を拳でぶっ飛ばしたのにはちょっと笑った。面白かった。村を隔離するのに氷で覆ったりとか、実は結構物理。
個人的にちょっと苦手だったのは、エレオノールさん。ファルマの家庭教師の薬師なのだけれども、ご都合主義的に動いていたような印象。ファルマの力を最初に知り、恐れ、頼って、弱気なって、認められて。その単純さが物語のわかりやすさの手助けになっていたのはわかるのだけれども、多分、声の印象もあって、彼女だけが不自然に感じられた。
好きだったのは、お店の常連のひょうひょうとした老人、ジャン。実は提督として大砲を海に打ち込む登場シーンは、ただの老人ではないのだろうなと思ったけれど、そのままに格好良いとなった。
この物語は、女性陣よりも、元使用人で薬局を手伝うセドリックや、提携店のピエール、お父さんも、男性陣が魅力的だったなと思う。

男性キャラクターに比べて、女性キャラクターが絵は可愛いけれども、テンプレートで物語を動かすパーツとしての役割が強い印象だった。その最たるキャラクターがエレオノールさんだったのかなと。
好きなシーンは、第10話のファルマが杖で空を飛ぶ場面。黒死病に侵された近隣の村を救うというシリアスなシーンではあるのだけれども、杖に飛び乗って、ビューっと飛んでいく所、鳥にぶつかりそうになった落ちそうになる所、なんとなく『魔女の宅急便』を髣髴とした。
総表として中の上。漫画を読み返したくなった。

 

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