アニメの感想。

日々ただ消費するアニメの個人的感想帖です。

『異世界食堂』

全12話視聴完了。

とん汁にバターは卑怯だろう。絶対美味しい。味噌のふくふくとした懐かしさすら感じるよく馴染んだ調味料に、豚肉の甘い油、それに茸のつるんこりこりした食管と芳醇な香りに、様々なお野菜。それがバターに合わないはずがないじゃない。卑怯だよ。最強だよ。今年、絶対やろう。白菜が安くなったら、絶対、豚汁バター試さなければ。もう、最終回に何を出すのかと思えば、完全に私を魅了してきたね。

物語としては、異世界に週に一度土曜の日だけに現れる不思議な扉。それは「洋食のねこや」という老舗洋食屋に繋がる扉だった。異世界の様々な場所に現れる扉を通じてやってくる、生まれも文化も、種族すらもバラバラな「向こうの世界」のお客たち。「この世界で生まれる異世界と現代、食堂に集う人々と店主、そして料理との一期一会を描く、温かい出会いの物語り」と、基本的に1話完結で各話ごとに異世界の様々な登場人物を取り上げ、作品自体には主人公やヒロインがおらず、様々な視点で描かれており、共通するのは「洋食のねこや」で料理を食べるということ。また、お客さん同士が「ねこや」での出会いを通じて自分達の世界で新たな関係を築いていたり、個々の話しは独立しているにも関わらず、各話がゆるく繋がっており、全体像がちょっとずつ広がっていく。

細々と爪が甘い。例えば第3話の「チョコレートパフェ」の一番底に残ったブラウニーに上のアイスクリームが溶けて染み込んでいなかったり、第4話の「オムライス」のお持ち帰りしたオムレツの断面図が不自然であったり、第10話のクレープのサイズ感とか、まぁ、上げたらキリがない。

その上、1話につき2つのメニューを詰め込んでいるため、そのキャラクターの説明や心情と、料理を食べる。それだけで終るため、結局、食べていただけだよね。そして絵や演出が特筆してるわけでもなく、主に画面を見ていなくとも説明的な感想と台詞で、嗚呼、何が起きているのか大体わかる。そんな感じなので、真剣に見るというよりも、流し見位の感覚でお手軽。

見易い。なのにこの癖になる感じは何だろう。取り立てて面白いと言うわけでもなし。ここがという場面があるわけでなし。寧ろ背景とか小物とか縮尺も遠近法も可笑しくて、ちょっと気になるよ。にも関わらず珍しくリアタイで追い掛けて、更に何度か見返していたよ。平坦で特に盛り上がりも、感情を揺さぶることなく、そのお手軽感が良いのかもしれない。そして、ただ食べているだけ。まぁ、そうなのだけれども、美味しい物の前では皆平等なのだなと。それがこの作品の本質なのかもしれない。誰も彼も店に来れば、お客様としての振る舞いを守り、品格を欠かない。美味しい物をお腹一杯食べる幸せを知っており、どんなお客も店では、食べ物の前では平等で、その平等であるということをわかっている。だからこそ互いのお気に入りメニューが一番美味しいと同じ立場で言い争えるし、一緒に楽しむこともでき、それがこの作品の見方なのかもしれない。凄く好き。

個人的に一番好きだったのは第8話の「クッキーアソート」の回。「洋食ねこや」の給仕であるアレッタさんがサラの家でメイドとして働く事になったとき、サラの留守にサラの妹が尋ねて来て、自分の私物である店長に貰った凄く美味しくて大切に食べていたクッキーの最後の5枚を全てお茶菓子として出す所、そしてクッキー缶を手に入れてあげた妹も一緒に皆で食べようと惜しげもなく振舞う所。みんな、良い人。アレッタさん、めっちゃ良い子。もうアレッタさん大好きだわ。缶入りクッキーアソートとか嬉しいよね。自分だけのクッキー缶とか、自分、誰にも分けずに食べたいと思うよ。アレッタさん良い子過ぎる。まかないを食べるアレッタさん可愛い。

それと、店主がイケメン過ぎる。第1話の登場シーンとか、もう、男前だね。それなのに第7話の「チキンカレー」の回でクロさんが少女の姿になり、裸で扉を開けたときの店主の態度が乙女で可愛い。ギャップ良い。

個人的に食べ物系が好きで、漫画も小説もエッセイもたくさん読んでいるけれど、食べ物系アニメをチェックしているけれど、この『異世界食堂』は全然食欲を刺激しない。最終話の豚汁にバターでさえ、そうきたかと既存の豚汁のイメージとバターの組み合わせが新鮮であっただけで、作中の台詞や絵で食べたいなと思ったわけではなかったので、寧ろ珍しいなと。食いしん坊だけれど安心して見られた。

総評としては中の中。個人的には凄く好き。原作読みたい。これは原作の方が面白い気がする。